「次のフロンティア」アフリカを巡る世界各国・地域の動向「運命共同体」と称する中国のアフリカ政策
「一帯一路」軸に関係性強める
2025年7月1日
中国とアフリカは、2000年に開始した中国・アフリカ協力フォーラムサミット(FOCAC)以降、「一帯一路」政策を軸に関係性をさらに強化している。中国とアフリカの貿易総額は2024年に2,956億ドルと過去最高を更新した。中国によるアフリカ向け直接投資(ストック)は2018年の461億ドルをピークに、近年は落ち着きを見せているが、中国政府はアフリカを「運命共同体」と表現するなど、その距離を近づけている。
「一帯一路」軸に、中国はアフリカとの関係性強める
中国のアフリカ政策をみる上で「一帯一路」政策は切り離せない。中国は2013年に中長期的な対外経済戦略「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」に基づく「一帯一路」構想を提唱した。2015年には「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動」を発表した。古きシルクロードに新たな生気を吹き込み、新たな様式でアジアと欧州、アフリカ各国との連携をさらに緊密にし、相互に利益のある協力を新たな歴史の高みに持ち上げるとして、アジア、欧州、アフリカ大陸を貫く「1ベルト、1ロード」を提唱した。また、2015年の第6回FOCACで「中国とアフリカの相互協力と共同発展の新時代を開く」と題し、10項目の協力プログラムを発表、アフリカとの協力関係の強化を図った。2017年には北京市で第1回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムを開催し、「六廊六路多国多港」に基づく六大経済回廊(注1)を掲げ、「一帯一路」のビジョンをより明確なものとした。翌2018年の第7回FOCACでは、アフリカ各国による「一帯一路」への参画を支持すると発表し、「一帯一路」におけるアフリカとの関係性をさらに強化した。2018年には中国・アフリカ金融協力銀行連合体が発足し、中国とアフリカの多国間金融協力メカニズムを構築した。
このような背景の下、2024年9月に北京市で開催された第9回FOCAC(2024年9月17日付ビジネス短信参照)では、中国は共同発展に向けた経済パートナーシップに関する枠組み協定をアフリカの22カ国それぞれと調印した。枠組み協定は目的や各種取り決めなどを示しており、今後の貿易・投資に関して交渉を行うための基礎とされた。また、同フォーラムでは「新時代の全天候型中国・アフリカ運命共同体の共同構築に関する北京宣言」「中国・アフリカ協力フォーラム北京アクションプラン(2025~2027)」が採択され、「中国・アフリカハイレベル運命共同体」(注2)の下で質の高い「一帯一路」の共同建設がうたわれた。
貿易:2024年は過去最高更新、中国による輸出が下支え
中国海関総署(中国税関)のデータを基に中国とアフリカの貿易取引をみてみると、2024年の貿易総額は2,956億ドルで、過去最高を更新した(図1参照)。これは4年連続の増加で、中国は16年連続でアフリカの最大の貿易相手となっている。貿易総額の増加は中国によるアフリカ向け輸出が下支えしているかたちだ。2024年の中国によるアフリカ向け輸出は1,788億ドルと過去最高を更新し、10年前の2014年(1,061億ドル)対比約1.7倍となっている(図2参照)。2024年の中国のアフリカからの輸入は1,168億ドルだった。輸入は2021年以降、約1,060億ドルから1,175億ドルの範囲で増減が続いており、2024年は10年前の2014年(1,157億ドル)対比0.9%増とほぼ同じ水準となっている(図3参照)。
国別にみると、南アフリカ共和国(南ア)が輸出入ともに1位となっており、2位から5位は順位に前後あるものの、輸出・輸入ともにコンゴ民主共和国、ナイジェリア、アンゴラ、エジプトが上位を占めた。なお、現在、中国とアフリカ諸国の自由貿易協定(FTA)は、2021年1月に発効した中国・モーリシャスFTAのみだ。また、習近平国家主席は6月11日に開催されたFOCAC閣僚会議で、53のアフリカ諸国に対し、輸入品の関税をゼロにすると表明している。

出所:中国海関総署

出所:中国海関総署

出所:中国海関総署
続いて、2024年の中国とアフリカの貿易について、グローバル・トレード・アトラスを用いて、品目別(HSコード4桁ベース)でみてみる。
中国によるアフリカ向け輸出は、船舶(HS8901)が最大で輸出全体の5.3%を占めた。次にスマートフォンなど電話機(HS8517)がシェア2.9%となり、以降、合成繊維(HS5407)、履物(HS6402)、自動車部品および附属品(HS8708)が続いた。船舶(HS8901)は前年比63.9%増と大幅な増加となっている。そのほかに増加が著しい品目としては、ブルドーザーなど建設機械(HS8429)が47.7%増、自動車(HS8703)が84.8%増だった。
中国のアフリカからの輸入は、石油(HS2709)がシェア25.3%と全体の4分の1を占めた。次に精製銅または銅合金(HS7403)がシェア13.7%となり、以降、金(HS7108)、アルミニウム鉱(HS2606)、鉄鋼(HS2601)が続いた。輸入は上位5品目で全体の約6割を占めている。石油(HS2709)は高いシェアを占めている一方、減少傾向にあり、2019年は455億ドル(輸入全体の47.5%のシェア)だったものの、2024年は295億ドルまで減少している。前年比で増加が大きい品目としては、精錬銅または銅合金(HS7403)の83.9%増、アルミニウム鉱(HS2606)の18.9%増、クロム鉱(HS2610)の22.7%増、銅鉱(HS2603)の23.1%増と、鉱物だ。
投資:中国からの直接投資は安定的に推移
次に、中国によるアフリカ向け直接投資をみてみる。中国国家統計局で確認ができる最新の統計では、2023年のストックが421億ドル(中国の対外直接投資ストック全体の1.4%)で、2018年の461億ドルをピークに、以降は400億ドル台で推移している(図4参照)。2023年のフローは40億ドル(中国の対外直接投資フロー全体の2.2%)で、直近10年間(2014~2023年)の平均は36億ドルとなっている(図5参照)。なお、2008年は南ア向けが突出しているが、これは中国工商銀行による南アフリカスタンダード銀行の株式取得によるものが大きい(2007年10月29日付、2007年10月30日付ビジネス短信参照)。

出所:中国国家統計局、CEIC

出所:中国国家統計局
中国国務院新聞弁公室の5月21日の記者会見で商務部の唐文弘部長助理が行った発表では、近年の中国企業によるアフリカ向け投資の成功事例として、エジプトのスエズ経済貿易協力区での中国企業による産業クラスターの形成が挙げられた。また、タンザニアでは、中国企業が建設した東アフリカ貿易物流産業園区が430社以上の中小企業を誘致し、本格稼働時には2万人以上の雇用を創出することが期待できるとした。さらに、ザンビアでは、中国企業が建設したザンビア・中国経済貿易協力区が銅の採掘、製錬、加工の全産業チェーンを構築し、アフリカにおける鉱物製品の付加価値向上に寄与していると述べた。
なお、中国によるアフリカへの融資については、2025年1月20日付地域・分析レポート「中国の対アフリカ融資は2000年以降で1,800億ドル超」参照を。
外交上の位置付け高まる「運命共同体」
2月には習近平国家主席が第38回アフリカ連合(AU)首脳級会合に向けて、「現在、混乱し錯綜(さくそう)する国際情勢に直面する中、中国とアフリカに代表されるグローバルサウスが大きく成長した。2024年は中国とアフリカの関係がさらに深まった年になった。FOCACの成功により、中国とアフリカは全天候型の運命共同体を構築するという新たなステージに入り、人類運命共同体を構築する時代の最前線を歩み続けていく」と祝辞を述べた。
3月には王毅外交部長が「中国とアフリカの関係は歴史上最良の時期に入った。中国は国交を有する全てのアフリカ諸国と戦略的パートナーシップ関係を実現し、中国とアフリカの運命共同体の位置付けは全天候レベルに引き上げられた。過去25年間、中国はアフリカの10万キロ近い道路と1万キロ超の鉄道の建設と整備を支援してきた。過去3年間でも、中国企業はアフリカに110万人以上の雇用を創出した。アフリカの近代化なくして世界の近代化はなく、アフリカの安定と発展は人類共通の運命に関わっている。アフリカは新たな目覚めを迎えており、世界の各国は自立と発展の道を歩むアフリカを支援すべきだ」と述べている。中国外交部長が毎年年初にアフリカ訪問を続けていることからも、中国の対外政策でのアフリカの重要度がうかがえる(2025年1月14日付、2024年1月19日付ビジネス短信参照)。
中国によるアフリカ政策は「一帯一路」政策を軸に、「グローバルサウス」「運命共同体」などのキーワードの下、重要性を高め関係性を近づけている。
- 注1:
- 「六大経済回廊」は(1)新ユーラシアランドブリッジ経済回廊、(2)中国・モンゴル・ロシア経済回廊、(3)中国・中央アジア・西アジア経済回廊、(4)中国・インドシナ半島経済回廊、(5)中国・パキスタン経済回廊、(6)バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊とされている。
- 注2:
- 2018年の第7回FOCACでも、「中国・アフリカ運命共同体」という表現が用いられていた。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・北京事務所
亀山 達也(かめやま たつや) - 2021年、民間企業よりジェトロ入構。調査部中国北アジア課を経て2023年7月から現職。