欧州産業界、欧州委に対し共通仕様の導入方針の再検討を促す
(EU)
ブリュッセル発
2025年07月18日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は7月14日、在欧日系ビジネス協議会(JBCE)を含む21の在欧産業団体と共同で、欧州委員会に共通仕様(common specifications)の導入に関し、再検討を要請する声明を発表した(プレスリリース
)。
共通仕様とは、EU統一規格がない場合に欧州委が策定するもので、事業者は共通仕様に準拠することで製品が必須要求事項に適合していることになる。欧州委は5月21日、共通仕様の導入に向け、エコデザイン規則など19の法令を改正するオムニバス法案を発表していた(2025年5月27日記事参照)。
21団体は、共通仕様は国際標準化機構(ISO)などが策定する国際規格とは異なるものとなり、市場の細分化やEU企業の競争力低下につながる可能性があるとした。さらに、WTOの貿易の技術的障害(TBT)に関する協定にある重大な貿易障壁となる恐れがあると指摘した。
欧州委が5月21日に発表した単一市場戦略では、標準化策定の遅滞を重要課題の1つに挙げた(2025年6月6日記事参照)。欧州委は対応策として、法改正や関係者の参画促進に加え、共通仕様の導入にも言及した。21団体は、特にEU官報で規格の引用に時間を要するため、規格の整合化や欧州委の担当部局の最終確認が遅れることを問題視している。欧州委は、規格の策定段階での財政支援や、EU官報への掲載を最適化することで、EUの標準化プロセスの効率化を図るべきだとした。さらに、欧州委の共通仕様の採択プロセスが不明瞭かつ透明性が低いと指摘し、策定条件やプロセス、関係者の関与のあり方などを明確にすることが重要と述べた。
共通仕様を検討する場合は、策定内容を唯一無二のものとする厳しい基準を設定し、「代替的な手段」と明確にした統一的なアプローチを採用すべきと述べた。また、現行の機械規則〔(EU)2023/1230〕の共通仕様に関する規定(20条)との整合性を取る必要があるとした。
欧州委は2022年、新たな標準化戦略を発表し、国際規格の策定にEUが引き続き主導的な役割を担うことを目指している(2022年2月4日記事参照)。21団体は、欧州委は共通仕様の導入ではなく、既存のEUの標準化システムの改善を優先すべきとし、EUの競争力強化や標準化分野の影響力維持に向け、欧州委に協力していくと述べた。
(滝澤祥子)
(EU)
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