6月のカナダ消費者物価指数、前年同月比1.9%上昇
(カナダ)
トロント発
2025年07月18日
カナダ統計局が7月15日に発表した2025年6月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比1.9%上昇で5月の上昇率(1.7%、2025年7月4日記事参照)を0.2ポイント上回った。(添付資料表参照)。
統計局は、上昇加速の主な要因としてガソリン(前年同月比13.4%減)の下落幅が5月(15.5%減)よりも小幅だったことを挙げた。さらに、乗用車(4.1%増、5月3.2%増)や家具(3.3%増、5月0.1%増)など一部の耐久財が上昇し、全体でCPIを押し上げる結果となったと説明。エネルギーを除いたCPIは、5月に続き6月は2.7%の上昇だったが、この背景として、4月に廃止された消費者向け消費者炭素税(注)の影響を一因に挙げた。
また、衣料品と靴も伸びが加速し、5月(前年同月比0.5%増)と比べて6月は2.0%上昇した。中でも、女性用衣類は5月に2.5%下落した後に6月は横ばいとなり、国際貿易の不確実性や関税による影響で業界のコストが増えたことが、押し上げ要因となったと分析した。
一方で、家庭用食料品(食料品の一部を構成)は、前年同月比2.8%増(5月3.3%増)で上昇ペースが鈍化した。この鈍化の主な要因は生鮮野菜(3.1%減、5月1.0%増)によるもので、特にタマネギ(10.3%減)とキュウリ(18.3%減)が大きく影響した。生鮮野菜全体で下落したのは2021年10月以来だった。これに対して、食料品の項目で上昇率が目立った品目として、コーヒー・茶類が挙げられ、コーヒーが23.2%増、焙煎(ばいせん)済みまたは粉砕されたコーヒー豆が31.4%増となった。
発表を受けて、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)傘下のRBCエコノミクスのエコノミスト、アビー・シュウ氏は、国内で生産・消費されるサービスの価格上昇率は堅調に推移しており、6月の労働市場の回復、企業の景況感の改善、消費者支出の底堅さも見られることから「経済成長には依然として下振れリスクがあるものの、利下げを再び行う可能性は低いだろう」と予想した(RBCエコノミクス7月15日)。
中央銀行の次回の政策金利と経済見通しを示す金融政策報告書の発表は7月30日に予定されている。
(注)連邦温暖化ガス汚染価格制度(GGPPA、Greenhouse Gas Pollution Pricing Act)は連邦OBPS制度(Output-Based Pricing System)と連邦炭素税制度(Fuel Charge)で構成される。連邦炭素税制度(Fuel Charge)は、最終消費者を対象に温室効果ガス(GHG)排出に直接かかわる化石燃料(ガソリンや軽油)に対する課税で、全ての条件を満たした納税者に対し、個人向けカナダ炭素税還付(CCR)が適用される(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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