NSW州の案件も採択、水素価格差支援策は第2ラウンドへ

(オーストラリア)

シドニー発

2025年07月18日

オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は7月4日、ニューサウスウェールズ(NSW)州ニューカッスル(2024年9月20日記事参照)で、豪化学大手オリカが手掛ける「ハンターバレー水素ハブプロジェクト(Hunter Valley Hydrogen Hub)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を、水素生産価格差支援策「水素ヘッドスタートプログラム(Hydrogen Headstart Program)」(以下、ヘッドスタートプログラム)の2件目として採択すると発表した(注1)。オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)を通じた助成額は4億3,200万オーストラリア・ドル(約410億4,000万円、豪ドル、1豪ドル=約95円)だ。2025年3月20日に発表された西オーストラリア(WA)州の「マーチソングリーン水素プロジェクト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(助成金額8億1,400万豪ドル)に続くもので、これら2件の助成をもって、ヘッドスタートプログラムの第1ラウンドの採択が完了した。

ハンターバレー水素ハブプロジェクト(2024年6月4日記事参照)は、第1フェーズで50メガワット(MW)の電解槽により1日当たり約12トン、年間約4,700トンのグリーン水素を生産する予定だ。オリカは、アンモニアや火薬製造過程で利用するガスを同ハブで生産したグリーン水素に置き換え、グリーンアンモニアおよび硝酸アンモニウム(注2)を製造する。製造したグリーンアンモニアは、国内の鉱業、農業、製造業などへの供給を想定している。同プロジェクトは、2023年12月に基本設計(FEED)を完了し、2024年5月にNSW州の開発許可を取得済みで、2028年の稼働を目指している。なお、2024年10月に当時の提案者だった豪電力大手のオリジンエナジーがプロジェクトから撤退した(2025年2月14日付地域分析レポート参照)。オリジンエナジーの撤退は現地報道でも取り上げられ、プロジェクトの継続が注目されていたが、オリカは自社の脱炭素化を目指し、引き続き、プロジェクトを推進する方針だ。

2回目の水素ヘッドスタートプログラム実施に向けた意見募集開始

連邦政府は2024年度予算案(2024年5月28日記事参照)で、水素ヘッドスタートプログラムの第2ラウンド(2024年度から10年間で13億豪ドル)を発表していた(注3)。これを受け、ARENAはプログラム設計のためのパブリックコンサルテーションを開始した。コンサルテーションペーパーはARENAのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから閲覧可能で、意見提出の期限は2025年7月31日となっている。

コンサルテーション終了後、ARENAはプログラムガイドラインを策定し、これがARENA法に基づき気候変動・エネルギー相の承認を受けた後、2025年第4四半期(10~12月)に第2ラウンドの関心表明(EOI)の受付を開始する予定だ。コンサルテーションペーパーによると、EOIの締め切りは受付開始から12週間後を検討している。

(注1)ヘッドスタートプログラムは、生産コストとオフテイカーへの売価の価格差を生産クレジット(補助金)のかたちで連邦政府が補填(ほてん)する施策(2025年2月14日記事参照)。補助期間は、操業10年間における実際の生産量に基づいて補助を受ける。ARENAによると、オリカが実際に助成を受ける前に複数の条件を満たすことが必要となっている。

(注2)硝酸アンモニウムは窒素肥料の主要原料の1つ。

(注3)2024年度予算案で発表された額は13億豪ドルだったが、コンサルテーションペーパーでは、第2ラウンドの予算が最大20億豪ドルの見込みと記されている。

(青島春枝、山崎美樹)

(オーストラリア)

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