ベトナムと米国の関税合意、日系企業は「積み替え品」詳細など動向を注視
(ベトナム、米国)
ハノイ発
2025年07月11日
7月2日のベトナムと米国の貿易協定合意(2025年7月3日記事参照)について、ジェトロはベトナムに進出する日系企業にその受け止めや対応をヒアリングした(7月4~9日)。
ベトナムからの輸出品に対する米国の関税が20%になる場合(注)、比較的影響は限定的との見方を示す企業が多かった。具体的には、「販売先(米国)で関税引き上げ分を何らかのかたちで吸収できる範囲内に収まる」「ドル高が進行し影響が緩和される」などの声が聞かれた。ただし、取り扱う商材や、他国の関税率によって影響の度合いが異なるため、各社は引き続き動向を注視している。
また、40%の関税が課されるとされる「積み替え品」については、企業によって受け止め方が分かれている。現地調達率が高いため「積み替え品」と見なされる可能性は低いと捉える企業がある一方、ベトナムで調達した部品であっても2次サプライヤーが中国で製造をしている場合、中国からの輸入部材と見なされ、「積み替え品」と判別されることを懸念する企業もあった。そのため、「積み替え品」の定義や判別方法について、ベトナム政府による詳細な公表や情報提供を求める声が多かった。
さらに、原産地証明書の発給やベトナム側での検査が厳格化されることを警戒する企業もあった。
そのほか、次のコメントがあった。
- 他国の関税率によっては、各国拠点間で生産体制を調整する可能性がある(電子機器メーカー)。
- ベトナム政府による裾野産業の育成の推進に期待したい(電子機器メーカー)。
- 「積み替え品」の指摘を避けるため、中国の部品メーカーのベトナムへの生産移管がさらに加速するのではないか(商社)。
- 米国の需要減速や世界全体の景気の冷え込みを最も懸念する(部品メーカー)。
多方面の動向を注視する必要がある状況は続くものの、「米中対立の影響で、20%の関税にかかわらず調達先を中国からベトナムへ切り替える動きがあり、多くの企業から新規の見積り依頼が寄せられている」と、プラスの影響に言及する部品メーカーもあった。
また、製造業のビジネスサポートなどを行うハノイ市内の企業は、米国の関税政策による具体的な影響はあまり把握していないと前置きした上で、「米国の関税政策がビジネスに直接影響しない日本の中堅・中小メーカーから、新規投資や拡張投資の相談は増加している」と述べた。
(注)ベトナムは合意内容の詳細などを明らかにしていないが、米国のドナルド・トランプ大統領は、この合意により、ベトナムからの対米輸出品には20%、第三国からの積み替え品には40%の関税が課される一方、米国製品はベトナム市場で関税なしで販売ができるようになると言及した。
(萩原遼太朗)
(ベトナム、米国)
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